Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2011.05.23過去のHana望月その二

能の形容の代名詞に「幽玄」といった表現があります。過去の事象を蘇らせつつ、夢の中で主人公は思いを語り舞います。心情的なものを除いて、見た目の感じで話をしますと優雅であったり颯爽としていたりとなります。ところがそれとは全く違う所に位置するものが現在能と呼ばれるもので、「望月」もその一つとなります。登場人物は全て生きている人で、その人たちが繰り広げるドラマが現在能です。なので伊勢物語や源氏物語を事前に調べて、ということもなく大まかなストーリーを把握していて、見て単純に楽しめます。

能「望月」:
安田友治

やすだともはる


は望月秋長(ワキ)と口論となり秋長に殺害されてしまいます。友治一家は離散し、妻子(ツレ・子方)は望月一族から逃れるため諸国を流浪するのでした。
舞台は
近江

おうみ


(志賀)
兜屋

かぶとや


という宿屋で、最初に友治の家臣だった
小沢友房

こざわともふさ


(シテ)が現れ名のります。またしなの信濃(長野)から近江へやってきた親子は兜屋に泊まることにします。3人は再会し予期事ながらも喜びあいます。一方秋長は友治殺害の罪に問われ一度は所領を没収されるものの、都での訴訟が無事に済み所領を返され意気揚々と帰国の途次でした。友治の妻子が泊まるちょうどその日、秋長も同じ兜屋に泊まります。秋長は名前を隠して泊まろうとしますが、
迂闊

うかつ


な供人(アイ)が名を明かしてしまいます。役者がそろい運命の歯車は回り、計略を廻らせた仇討ちが始まります。その夜の秋長の座敷では酒宴が催され、友治の妻は
盲目御前

めくらごぜ


(流行の芸能者)に扮し、子息花若は
八撥

やつばち


(
鞨鼓

かっこ


)を打ち、家臣友房は獅子舞を舞います。当時人気だった芸能を集めた酒宴は、微妙な緊張感を含みつつも秋長を油断させます。そして獅子舞の終わりと共に秋永も最期を迎え、本懐は遂げられるのでした。

カテゴリー

バックナンバー