Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2011.05.30過去のHana望月その三

前回は「望月」のストーリーをお話申し上げましたので、今回は舞台進行をお話したいと思います。

囃子、地謡が座に着きますと、最初に小沢友房(シテ)が登場し名のります。ここではさる事情があって兜屋という宿屋の亭主になっていると含みを持たせながらも、詳しくは話さず座に着きます。

場面は変わり安田友治の妻子(ツレ・子方)が登場します。二人も名のり、そこで夫友治が望月に討たれ一家は離散したことを述べます。二人は逃避して近江の国の守山の宿、兜屋へとやってきます。訪れた二人を見るなり友房は気が付き名をなのり、三人は思いがけない再会に喜び合います。

そしていよいよ仇、望月秋長(ワキ)の登場です。秋長は友治殺害のため都で13年にわたる訴訟を無事に済ませ、喜び勇み本国信濃への帰国の途時、この兜屋に泊まります。秋長は供人(アイ)に名を隠すように申しつけますが、友房に問われ迂闊な供人は名を明かしてしまします。

友房は友治の妻子に仇望月が泊まっていることを告げ、仇打ちを決行することを伝えます。友房の提案による仇討のための作戦が始まります。それは酒宴を催し、秋長の油断を誘い仇打ちを遂行しようというものでした。友治の妻が盲目御前に扮し謡を謡い、子息花若は八撥を打ち、自身は獅子舞を舞うという役割も決まり秋長の座敷へと行きます。

友治の妻は杖をつき花若に手をひかれ、秋長の座敷で曽我兄弟の仇打ちの件を謡います。微妙な緊張感を孕みつつも友治の妻の謡が佳境に入った時、花若は「いざ討とう」と逸るあまりつい口に出してしまいます。友房の機転で「八撥を打とう」ということ、と繕われ、緊張も緩み秋長は友房に獅子舞を所望します。

花若の八撥が済むとそのまま獅子になります。花若の八撥から獅子へと囃子の演奏が大変凝っていて面白く、またシテは望月にのみある獅子頭を着けて獅子舞を舞うクライマックスシーンです。

獅子舞が終わる頃秋長の酔いは進み、そのまま花若と友房に取り押さえられ最期を迎えます。

仇打ちのシーンは花若も友房も小さい刀を実際に抜き、斬る型をします。演出としましては実際に秋長を斬るやり方と、秋長に見立てた物を斬るやり方とあります。どちらでするかはご覧になって戴いてのお楽しみにしたいと存じます。

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