Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2012.07.17過去のHana松風 その二

諸国一見の僧(ワキ)が津の国須磨の浦へとやってきます。そこには何か謂れありげな松の木があり、土地の人(アイ)に尋ねてみますと、松風村雨という二人の海士の旧跡だと教えられます。僧が逆縁ながらと二人の海士を弔っていると、秋の一日は夕暮れ時を迎えます。

二人の海士(シテ・ツレ)が現れ、汐を汲む辛さや、頼りない身の上を嘆きます。沖に小さな漁り舟、空には月、雁や千鳥の姿もあり、汐風が吹き抜ける、そんな須磨の秋の夕暮れは寂しさもひとしおです。嘆いてばかりいられない二人は汐を汲もうと、気を取り直します。陸奥の塩釜、阿漕が浦、二見の浦、鳴海潟、芦屋の灘など縁のある所を歌にして、汐を汲みます。空には大きな月が輝き、小さな二つの汐汲み桶には、それぞれに月が映ります。月は一つ、月影は二つになったと、姉妹は月を車に乗せ、汐汲み車を引き塩屋へと戻るのでした。

「松風」はここまでで短い曲の一曲分位あるようなボリュウムです。でも旅僧と二人の海士はいまだ出会っていません。それぞれに登場し、それぞれの話が済んだ所です。そしてここから旅僧と二人の海士の関わりが始まります。秋の夜は長いのです!その件はまた次回。

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