Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2013.09.09過去のHana安宅 その六

一息入れている一行に、先程の詫びにと関守富樫が酒を持って現れ、一行には再び緊張が走ります。辨慶は義経に場を離れてもらい、一同には油断なきようにと含めながら、富樫と共に酒宴を始めます。
辨慶は比叡山の東塔、西塔、横川の三塔きっての遊芸達者。
「鳴るは瀧の水」と謡い、舞って花を添えます。
舞が終わる頃、辨慶の目配せで一行は疾風の如く立ち去り、辨慶も最後に関守富樫に暇を告げ、共に奥州を目指すのでした。

最後の最後まで油断許さぬ舞台展開です。富樫が再び現れる件は、解釈見解の別れるところですが、何よりもそのことによって緊張した状態が最後まで保たれ、12人の山伏が一斉に姿を消すという妙が際立つ、極めて優れた演出になっているということです。

登場から終曲に至るまで、義経の人生そのものを彷彿とさせるが如く、波乱に満ち起伏に富んだ構成になっていて、この曲が後世の芸能に多大な影響を与えたことも頷けます。

そして今回の公演では、昨今上演されることが少なくなりました、
クリ・サシ・クセを上演致します。
義経:「現在の果を見て、過去、未来を知る」(サシ)
義経:「思う事 叶わねばこそ浮世なれ」(クセ) 
義経が現状を嘆きながらも、自らの戦を思い返す場面です。
激しい「安宅」の中で極めて静かなシーンになります。
こちらも合わせてお楽しみください。

 
今年の「烏帽子折」から始めまった、「つなぐ」をテーマにした義経シリーズの最終章「安宅」。
曲だけではなく、多くの「つながり」の中での公演となりました。
ご来場いただく皆々様をはじめ、ご出演の皆様とのつながりを胸に、
謹んで勤めさせて戴きたいと存じます。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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