Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2015.04.04過去のHana「奥川恒治の会」十周年記念

10周年の記念に選びました曲「盛久」は、平家の人としては無名人で、能としても派手な曲ではありません。しかしながら表面的な派手さの代わりに、芯の強い日本の武士の魂が宿っているような曲です。静かに強く、強々とせず媚びることなく、運命を受け入れ淡々と祈りを捧げる。
現在物ですから場面転換がはっきりしていて、京都清水寺から鎌倉由比ヶ浜へ、そして頼朝の御前となるわけです。装束も最初と頼朝の前とでは異なり、囚われ人から武士へと変わります。心中激しい葛藤があることは想像に易く、それを内面で処理し、最後の舞は祝宴の華やかさを持ちながら、油断ない緊張感を要することになろうと思います。複雑な心境を胸に秘め、凛と清廉に勤めたいと思っております。

盛久は観音経の光により救われるので、光明ということを一つのテーマに考えました。喜之師にはこの会の1回目の上演曲「弱法師」を願います。師が演じる盲目の主人公俊徳丸が見る光明を、10年目の今回改めてお手本にし、初心を顧みたいと思っております。喜正師に舞っていただく「田村」は清水寺の千手観音様の光明に助けられる物語で、光明に導かれる番組となっております。

狂言「蝸牛」は近年学校公演等でご一緒する機会の多い善竹富太郎氏と大二郎氏、大藏教義氏の3人にご出演を願います。学校公演では子供たちの心を掴むのがとても上手で、参加の子供たちはいつも楽しそうにしています。
ホッとする和やかな笑いを人気曲「蝸牛」で堪能していただけると存じます。

そして前回も大好評でした葛西聖司氏によるエンターテイメントな解説は、これだけでも独立して楽しめるほど、わかりやすく楽しいお話です。

会を10年続けてこれたことも皆々様のご支援の賜物と、改めて御礼申し上げる次第でございます。盛久は奇跡の光により助かり、それは生まれ変わったかのようです。私も10年を一区切りと考え、盛久が踏み出した新たな一歩にあやかれるように、本曲を勤めさせていただきたいと思っております。
皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。宜しくお願い申し上げます。

第10回奥川恒治の会「盛久」

平成27年6月7日(日)14時 宝生能楽堂
解説:葛西聖司
仕舞『弱法師』観世喜之
  『田村』観世喜正
狂言「蝸牛」善竹富太郎
能『盛久』奥川恒治

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