Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2005.05.23過去のHanaさとえ学園新聞に執筆

さとえ新聞の「名士・名言」というコーナーに短い文章を書かせていただきました。
名士・名言には程遠いのですが恥ずかしながらご紹介させていただきます。


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さとえ学園新聞 第407号(平成17年5月10日)

名士・名言  「少しずつ」の勧め

能、狂言をご存知でしょうか。最近は各方面で取り上げられ、以前と比べると随分知られてきたと思います。

私はそんな古典芸能の能楽に携わっています。主として舞台出演ですが、普及のためもあり、ご希望の方に能の謡や舞いをお教えしています。皆さん、プロを志すのではなく、ご自身の健康維持や趣味として楽しんでいらっしゃいます。

「ご存知でしょうか」と書き出しましたのは、能は普段、身近なものではないからです。お稽古をご希望の方でも「全く初めてで何も知りません」という人が多いのです。学生さんからお年を召した方まで幅広い年齢層にご愛好頂いていますが、年齢に関わらず「知らない事」は悪い事でも恥じる事でもありません。「こんな事を聞いたら笑われ、恥ずかしいかな」なんて、結構あることです。半面、他の人の疑問や質問が周りの人のためになる、ということもよくあることなのです。大事なことは興味を持ち、勇気を出し、正しく覚えていくことです。そして、諦めないことです。せっかく興味を持ち、勇気を出したのですから、根気よく続けて行くことも大切なことです。

お稽古をするということは、自分自身と向き合うことで、納得の行かない事をそのままにして、自身をごまかしたり逃げたりするより「一つずつ、少しずつ」習ったことを確かなものにして行くのが王道だろうと思います。私は、お弟子さんに教えた全てをお弟子さんが理解し、出きるようにならなければいけない、とは思っていません。出来る事から始め、難しく苦手な事は「少しずつ」です。ハードルを一つ越えるたびに喜びとなり、やる気も出て来るものです。目に見えて飛躍的に進歩して行かなくても、積み重ねたモノは大きな力と自信になって行くのです。

正しい事を知り、学び、身に付けて行く。能の稽古に限りません。先人は、日常生活でも、意識や心掛け一つで楽しく豊かで、活力に満ちた充実した人生を送ることが出来る、との数多くの教訓を残しています。

探究心を持ち、勇気を出して「少しずつ」を根気よくやってみてはいかがでしょうか。きっと、いつの日か振り返った時に、歩んだ道のりの長さ、登って行った高さ、強くなった自分に気が付き、驚く筈です。

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