Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2009.10.16過去のHana熊坂

11月4日(水)の14時から長谷にあります中森氏の鎌倉能舞台で「
熊坂[くまさか]」を務めます。そのご案内を申し上げます。

熊坂とは盗賊の名前です。それも手下を何十人と従えた伝説の盗賊の首領です。熊坂は奥州へくだる

金売
[
かねうり
]


吉次
[
きちじ
]

を襲うのですが、同行していた牛若丸(義経)に返り討ちにあいます。後半は熊坂が一人で牛若丸との奮戦の様仕方話に見せる動きの激しい能です。

都から東国へ向かう僧(ワキ)が美濃の国へさしかかると、一人の僧(前シテ)に呼び止められます。呼び止めた僧はさる者の回向をして欲しいと頼み、一本松の下の自身の持佛堂へ案内します。しかしそこには絵像・木像などはなく兵具、武具ばかり置いてありました。訳を尋ねると、このあたりは山賊、夜盗が多いので旅人や近隣の人を守るためだと答えます。そして僧が

眼蔵
[
めんぞう
]

(寝室)に入ってしまうと持佛堂は消え、そこは先ほど案内された一本松の下の草原だったのです。〈中入〉

やがて在りし日の姿で熊坂(後シテ)が現れます。熊坂は自身の手勢の名だたる者の名を挙げ、金売吉次一行を襲った話をします。熊坂一味は討ち入ったものの手勢はことごとく討たれ、命ある者はみな逃げてしまいます。一度は自分も怯むものの思い返し立ち向いますが、最後は討たれてしまったこと等を、長刀を振るって仕方話に見せ夜明けと共に消え失せます。

前半は

直面
[
ひためん
]

の旅僧(ワキ)と化身の僧(シテ)同じ出で立ちで、とても珍しい設定です。後半は長刀を振るって、所狭しと動き廻る見せ場が続きます。シテの熊坂一人しか舞台上には出ないのですが、相手の牛若丸がいるかのような錯覚を覚えるのもこの能の見所の一つになります。

紅葉にはいささか早いかもしれませんが、秋の鎌倉の風情を楽しみがてら、熊坂に会いに鎌倉へ足をお運び戴ければと願う次第です。

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