Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2011.07.01過去のHana望月後記

済んでしまえば早いもので、自主公演で「望月」を舞ってから数日が経ちました。今回はなかなかお客様もお出かけになりにくい状況だったことと存じますが、お運び戴きました皆さまには改めまして御礼申し上げる次第でございます。ありがとございました。

「望月」は想像していたよりもはるかに体力、気力の要求される曲でした。また、直面(ひためん)、面を付けず素顔で演じるということも、大変なことでした。圧倒的に面を掛けていることの多い私たちにとって、素顔で通す事は思っている以上に大変なことでした。
能としては場面設定がはっきりしているため、それぞれの箇所で似つかわしい演技が必要であり、過ぎれば能らしくなくなります。それは能の代名詞「幽玄」というものとは対極にある演技だと思います。今回稽古をしながらそこに至るにつけ、能の奥行きの深さを感じずには居られませんでした。なんと懐が深い芸能であることか!と、この出会いと発見が面白いんです。そしてこの曲と出会えてよかったと実感する時でもあります。

最後の獅子舞は囃子の演奏に身を任せて、おもいきって舞わせて戴きました。良かったか、悪かったか私自身もわかっておりませんが、体が囃子のリズムに乗れたように思います。

子供が着ていました紅白段厚板(着物)はその昔、私が中学1年の時、子方の最後にと当代喜之師が作ってくれた装束でした。「新しい装束を着て頑張りなさい」と言って戴いたことをいまだに忘れません。いつの間にか月日が経ち、その装束を長男が着、今回次男が着て共演となりました。親子3人が同じ装束を着て、同じ役(望月の子方)をやるというのも不思議なご縁でした。

師匠をはじめ、いろいろな方からの助力を戴き今回も務めることができました。そしてかけがえのない仲間が居ることにも改めて、感謝する次第です。

カテゴリー

バックナンバー