Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2012.08.14過去のHana松風 その四

松風は行平の形見を身に付け、松を見つめています。そしてこんなことを口にします。
「行平が立って松風とお召しになっています。さぁ参りましょう」と


静から狂へと変わる瞬間です。

村雨はそんな姉を静止し、目前には松の木があり、行平はいないと言うのですが、松風は聞くどころか更に激しく高揚します。
「待つとし聞かば帰り来ん」(待っていると聞いたら帰ってこよう)その言葉をお忘れですか。忘れていた村雨も「頼もしい」と思い出し、松風は「そんなお気持ちの歌でした」と、二人共に行平への恋慕の情は絶頂に至ります。

「立ち別れ 稲葉の山の峯に生ふる 松とし聞かば 今帰り来ん」(今別れて旅立ちますが稲葉の山に生えている松のように私を待っていると聞いたならばすぐに帰りましょう)

この歌の言葉を割いて舞が入ります。狂おしく舞う松風は松の元に行き、在りし日の行平そうされていたように、寄り添います。
時は経ち夜も明けようという頃、松風は旅僧に回向を頼み村雨と共に消え失せます。夜明けの須磨の浦には、静かにたたずむ松の木の間を風が吹き抜けていくばかりでした。

松風村雨姉妹と行平の物語りをはじめ、9月2日(日)の公演は「愛と絆」をテーマに上演致します。どうぞよろしくお願いします。

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