Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2013.08.26過去のHana安宅 その四

関に入るやすぐに咎められる一行、心得た先達辨慶が応じます。

南都東大寺建立のために北陸道を廻っていると答える辨慶に、関守たちは容赦なく山伏に限って止める関であると詰め寄ります。その仔細を聞いた辨慶は、本物の山伏である自分たちが咎められる筋はないと返しますが、昨日も山伏を斬ったと言われ、問答をするつもりはないと富樫に言いきられてしまいます。それならば最後の勤めを始めようと、全員でどっかと関所に座り込み山伏問答を始め、数珠を揉んで見せます。

富樫はその様子を見て、勧進帳を読むように辨慶に言います。
そうです、この一行は関に入った最初から「東大寺建立のため」と言っていました。

勧進ですから神社仏閣の建立などのために寄付を集めているわけですが、それに当たってその趣旨の書いてある勧進帳を持っていないことはありません。ですが、もとより持っているはずもない義経一行、ここで勧進帳が無いことが露見すれば一戦交えることは必定。この関所を破ったとしても頼朝に居所を知られることとなり、奥州への道のりは極めて困難なことになります。決死の覚悟で辨慶が一つの巻物を取り出し、それを勧進帳と声高らかに読み上げます。そうです、読み上げたように見せて、即興で辨慶が文章を拵えているのです。耳を凝らして聞く富樫、道理にかなわねば、途中で詞に詰まってしまえば一巻の終わりです。辨慶が読み進むうちに富樫は、巻物の中を覗こうと詰めよりますが、辨慶もしたたかにかわします。そして入魂の勧進帳のあまりの迫力に、関守たちも驚き、ついに通る事を許してしまうのでした。

一度は安堵する一同、このまま何ごともなく通過できればいいのですが・・・。

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