Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2024.12.10舞台のこと...

 「鉢木」(はちのき)第二弾!
主人公常世(つねよ)は、最後に最明寺、時頼から返還された土地と新たに貰った土地の安堵状(あんどじょう)を、いただきます。安堵状とは土地の所有者を記した、権利書ですね。これで常世は大出世をしたことになります。この、この上なく大事な書状の渡し方が独特で、流儀によって異なります。
 下掛宝生流の場合、床几にかかったまま、常世に向かって投げます。とんでもない所に落ちるのを、私は見たことがないのですが、落ちてみないとどこへ飛ぶのか、分からないのは分からないです。
 今回お相手いただいた福王流は、投げずにポトリと自身の足元に落とします。この場合、落ちる場所は確定されています。
 どちらも手渡しではなく、常世が拾いに行くという点は共通で、面白いものだと思いました。稽古能の時は下掛宝生流に、申し合わせと本番は福王流にお相手いただきましたので、どちらも経験できました。また、福王流の古いやり方では、最明寺がワキツレの二階堂に渡し、二階堂が常世に渡すやり方もあったそうで、こちらは随分丁寧な感じになりますね。
 一つのことにしましても、色々なやり方があり、先人たちが考え、培ったものがあります。それが能楽の財産というわけですから、知れば知るほど面白くなるのです。

カテゴリー

バックナンバー