Hana奥川恒治が綴る日々のblog
2024.12.16舞台のこと...
先月になりますが、自主公演「奥川恒治の会」で「定家」(ていか)
を、勤めさせていただきました。お尋ねのことなどもありましたので、お答え方々書いてみます。
雨宿りのため旅僧が立ち寄った所が、「時雨の亭」(しぐれのちん)というところで、今は小倉山の常寂光寺(じょうじゃっこうじ)付近と言われています。昨今、冷泉家より顕注密勘(けんちゅうみっかん)という、古今和歌集の自筆の注釈書が発見されました。上中下と3冊のうち、2冊が定家の自筆本だそうで、国宝級の発見とのことです。歌論、歌評など定家の研究が進むことは間違いないところで、謎多き「時雨の亭」の事も、わかればと期待を寄せるところです。
この時雨の亭に旅僧が雨宿りしたところから、物語は始まります。
全く必然のない偶然から、深い物語がはじまります。とっても上手な設定ですね。なんでもない日常から人の深淵に触れるような、深い物語に誘うわけですから。禅竹という作者の手腕の巧さが際立ちます。
禅竹の作品は、世阿弥が作り上げた作風を踏襲しつつ、違う結論を導く、そんな印象を持っていましたが、勤めたいまは少し違う感想を持っています。世阿弥の作り上げた作風は最強であった。これを利用してこそ、ムゲンの人間物語が構築できる、と考えたのではないかと感じました。百年、千年経っても変わらないのが、人間の物語なのだと、人の営みと改めて向き合うことにもなりました。