Hana奥川恒治が綴る日々のblog
2024.12.17舞台のこと...
「定家」その2です。
私が勤めた金春禅竹(こんぱるぜんちく)の作品で、もう一曲「野宮」(ののみや)という曲があります。どちらも居クセと申しまして、舞台中央に座っているだけで、芝居を進めるやり方で、男女の恋愛をテーマに作られた曲です。どちらも、主人公は成仏を選ばない点も似ています。
「野宮」の主人公、六条御息所は原作の中で、源氏と別れ伊勢へ行きました。それは苦渋の選択で、迷う自身との葛藤の末の決断でした。故に死後、源氏との思い出の地、野宮を離れることはなく、それは成仏を捨てるものの、全ては一人での事でした。
一方「定家」の主人公、式子内親王は定家の執心の葛がはいまとわる、地獄の石塔からの解放を望みます。僧の弔いにより、望み通り石塔から解き放され、自由を手に入れるものの、再び地獄の石塔へと戻っていきます。
決定的な違いは、六条御息所は最初から一人であったのに対し、式子内親王は二人から一人になってしまったことです。これは予定外だったのではないかと思っています。どこで、どんな境遇であろうと、二人で居る方がいい。「しのぶ恋」という設定が、それを後押しします。なんと、巧妙に作られた作品かと、しみじみと思うのでした。