Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2024.12.18舞台のこと...

定家 その3
 ご覧いただいた方から、何かにつけご質問や感想を、いただいた部分と申しますか、型です。終曲間近の最終局面で、作り物(塚)をシテの式子内親王が出入りをして回る場面がありました。「定家」にのみ存在する特別な型です。
 式子内親王は旅僧の弔いで、望み通り石塔から抜け出すことができました。そこで、恩返しに舞を舞いましょう、となりますから、そのまま成仏していくのが、順当に思えます。ところが、舞い終わってほどなく、式子内親王は石塔へと自ら帰って行きます。
 この部分でシテ(式子内親王)は、地謡側から作り物に入ります。このあと、問題の作り物の出入りがはじまります。最初は前方の地謡側の柱を左に回り、続いて前方脇正面側の柱を右に回ります。回りながら出入りをするのですが、ちょっと不思議な型ですね。実はこれは石塔を再び覆う定家葛を象徴しています。戻って来た式子内親王を、待っていた定家の執心の象徴、定家葛は再び勢いを増し、石塔が見えなくなるほど覆い尽くす。それを型として表現したものでした。
 今日は不思議な型の解説、明日はご意見、感想にふれてみようと思います。

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