Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2014.07.01過去のHana第9回奥川恒治の会のご案内

本年で9回目を迎えます「奥川恒治の会」をご案内申し上げます。
本年は源氏物語の中でもとりわき人気の高い、
六条御息所を主人公とした「野宮」に取り組みます。

それではまずは能『野宮』の世界のご案内をいたしましょう。

諸国一見の旅僧(ワキ)が秋も深まった京都嵯峨野、野宮にやって来ます。旅僧が心静かに参詣していると一人の美しい里女(前シテ)が現れます。里女はここが昔伊勢の斎宮に立つ人の潔斎の場で、それが途絶えた今も人知れず神事を行っているのだと言い、何も知らない旅僧は帰るようにと告げます。旅僧は出家している身故と、更に謂れを尋ねてみますと、里女は六条御息所と光源氏の物語を始めます。源氏の愛を失った御息所は斎宮(娘)と共に伊勢へ下向するために、ここ野宮で潔斎をしていました。長月(9月)7日は源氏が禁忌を犯してまで野宮に訪れた特別な日でした。御息所は心揺れながらも源氏への思いを断ち切り、斎宮と共に伊勢へと向かったのでした。あまりにも詳しい話を不思議に思った旅僧が里女の素性を訪ねると、里女は自身が御息所であることを告げ、黒木の鳥居の元で姿を消します。〈中入〉
旅僧は里人(アイ)から野宮と御息所の謂れを聞き弔っていると、御息所が車に乗って現れます。車は賀茂の祭りで御息所が屈辱を受けた忌まわしい記憶その物でした。御息所は車争いを再現して見せたかと思うと、源氏との昔を偲び舞うのでした。妄執を晴らしてほしいと願うものの、御息所が火宅の門から踏み出すことはできませんでした。

~「野宮」にまつわる源氏物語の背景~

六条御息所は東宮がご存命であれば、優れた皇后だったはずです。また源氏とのことがなければ、周囲から尊敬されその生涯を送られたことでしょう。一たび全てを許してしまうと、源氏はその後間遠になり、不仲と聞かされていた本妻葵上は懐妊、出産します。時を同じくして夕顔という新しい恋人も現れ、御息所は鬱屈とした日々を過ごしていました。気晴らしにと出掛けた賀茂の祭り、輝かしい源氏の姿を一目見ようとお忍びの車に乗っておりますと、後から来た本妻葵上の車のためにどかされ、揚句車も壊されるという考えられない屈辱を受けます。そして、源氏の愛を受けた二人の女性には、悲劇が訪れることになるのでした。
仕舞「葵上」はまさに頂点に達した御息所の心が生霊となり、葵上を責めたてる場面なのです。
御息所は源氏と離れるため、前例のない斎宮への付き添いとして、伊勢へ赴く苦渋の決断をします。全てを承知の上で潔斎の場へ訪れる源氏、御息所の心が平穏であろうはずもなく、闇の輪廻へと堕ちてしまったのでしょうか。

「会者定離(えしゃじょうり)の習い」(会った者は離れることが定)という言葉から始まる前場の部分は、下に坐したまま動かず激しい心の動きを表現します。能独特の手法で、静の中の極限の動です。激しい心の動きを、ご覧頂く皆様と共有できましたら至極の舞台になろうと思います。
秋のひと時、源氏物語の世界に浸って頂けましたら幸いです。

チケットはHPにて本日7/1(火)より先行予約を受け付けております。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。

第9回奥川恒治の会「野宮」

平成26年9月28日(日)14時 宝生能楽堂
仕舞『葵上』観世喜之
狂言「舟ふな」野村万蔵
能『野宮』奥川恒治

→くわしい番組はこちら
→チケットのお申込みフォームはこちら

憩「野宮」のご案内

→ 野宮「忘れられぬ9月7日、巡り続ける想い」

カテゴリー

バックナンバー