Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2011.06.06過去のHana望月その四

今回上演致します「望月」は現在物という、生きている人たちが繰り広げるドラマなので、それぞれに事情を抱えた人たちのやりとり、ばかし合いが一つの見どころになっています。

親子と家臣が再会した喜びの余韻を噛みしめる暇もなく、現れる仇望月。油断なく名を隠して旅をする望月、迂闊にも供人は苗字を口走ってしまい友房に知られてしまう失態と走る緊張。

望月と知るや仇討へと逸る花若を制しつつ、計略を実行していく友房。そして命を掛けたお座敷芸が始まります。曽我兄弟の仇討の件を謡おうという母に、詰め寄る望月の供人。微妙な緊張を保ちつつ始まる謡の中、暴発する花若。その刹那、座の緊張はピークに達し身構える望月と供人、機転を利かせその場をしのぐ友房。手に汗握り、固唾をのむといった名場面です。

そんな芝居の面白さに加えて扮装の妙が、更なる本曲の魅力となっています。友房は「獅子頭をかづき」と獅子舞を舞う準備をしようと言います。能では龍神の役には龍を、稲荷明神の役には狐を頭上にのせて、象徴的に役柄を表します。それでは「獅子ガシラ」ならば頭上に獅子をのせるのか?さにあらず!カシラと金の扇を組み合わせて「獅子頭」を演出します。なんとも粋で洒落た姿です。シテの扮装はこの獅子頭の他に覆面をしてざっくりと上着を着ます。このざっくりがまたいいんですよ。子供の頃に子方をしていまして、たまに視界に入るシテの姿がなんともかっこいいので見たい!と思ったものでした。この独特の姿は説明しにくいので、ぜひご覧になって下さい。

この獅子頭は望月独自の物で、披演を許された人にのみ伝授される秘伝です。獅子頭を作る時は屏風を立て、外から見えないように作るのです。奥が深いですね!

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