Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2021.01.26コラム...

 能の衣装を装束(しょうぞく)といいますが、この装束を舞台衣装として着るには、人の手が必要です。一人では着られないので、誰かに着けてもらいます。能楽界には衣装専門の仕事をする人がいませんので、役者が覚えて、お互いに着けあうということになります。
 この装束を着けるために、紐や糸を使用します。現代はホックやマジックテープといった、便利なものがありますが、基本的には組紐と糸を使います。
 組紐は専門の職人さんが作ります。一口に組紐と言いましても、用途によって形や色がそれぞれに違いますので、専門職としての技術や知識が要求されるわけです。
 写真の組紐は、烏帽子(えぼし)に使用するものです。色によってその烏帽子を冠っている人物が変わり、この場合は源義経や平家の公達といった武将が多いです。この紐があごの下にきますと、キリッと引き締まって見えますね。これが紫色になりますと、柔らかくしなやかに見えますので、静御前のような、女性に向いています。
 できたての紐が好きで、見ても触っても飽きません。職人さんの心がこもる組紐、小さなアイテムながら、舞台を大きく支える、大切な小道具です。

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