Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2022.11.08舞台のこと...

 第17回奥川恒治の会も、いよいよ2週間後となりました。改めまして、会の詳細をご案内申し上げます。
 
 仕舞「知章」(ともあきら):平知章が主人公の曲です。父は平知盛、平家の中でも際立って有名な武将の一人です。戦禍で危うい時、父知盛を助け、自らが敵に討たれます。その緊迫した場面が仕舞となっています。

 仕舞「笹之段」(ささのだん):「百萬」という曲の一節です。笹を持って舞うこの段では、親が子を想い、自分を顧みないことを、切々舞い上げます。

 仕舞「舎利」(しゃり):お釈迦様を熱愛のあまり、その舎利を盗む足疾鬼(そくしっき)。韋駄天(いだてん)という足の早い守護神が、天上、地上と追い掛け、ついに取り返します。壮大なスケールの鬼ごっこです。

 狂言「萩大名」(はぎだいみょう):和歌を覚えられない大名と、それをつくろう太郎冠者との絶妙のやり取りを、実の親子の阿吽の呼吸で、お楽しみいただきます。

 仕舞「遊行柳」(ゆぎょうやなぎ):私が拝見したく、師匠喜之師にお願いしまして、舞っていただく一曲です。老木の柳の木の精が主人公で、長く見てきた都と都人の風情を、風になびく老柳として、サビの世界観で作り上げます。

 能「三井寺」(みいでら):清水寺でお告げ受けた母が、三井寺に行き探していた我が子と再会を果たす物語です。この三井寺の鐘を核に、この曲は展開します。

鐘を撞こうとする母は僧に制止され、
漢詩の故事を語ります。

・團々(だんだん)として海嶠を離れ
・冉々(ぜんぜん)として雲衢(うんく)を    
 出づ
 月がまるまるとした形で山から出  
 て、次第に雲の間を昇ってゆく
この下句が
・今宵一輪(こよいいちりん)満てり
・清光(せいこう)何れの處にかなから   
 ん 
 今宵はまさに満月。清らかな光は至 
 らぬ所もないだろう

この下の句ができた歓びに、鐘を撞いて捕らわれるものの、理由を話し許される故事。鐘を撞くことの正当性を語り。

そして更に、涅槃経の四句の偈文を
・諸行無常(しょぎょうむじょう)
・是生滅法(ぜしょうめっぽう)
・消滅滅已(しょうめつめつい)
・寂滅為楽(じゃくめついらく)
全てのものは無常であり、生死を離れ寂が滅すれば、真の楽にいたる。
偈文の詳細は、ユーチューブでご確認ください。

鐘の音はこの4つの偈文を表し、佛の教えと説きます。また、時を告げる鐘の音は、季節や人の別れを促し、次の時へ進むのだと。しかし、この三井寺の鐘の音は、親子の再会を促した、おめでたい鐘であったため、我が子と再会が叶ったとなります。

満月が光り輝く静寂な世界と、鐘のもとで知的に狂う母、三井寺の鐘は最後に親子の味方となります。
そんな母はこの度、この衣を身にまとって三井寺へ参上します。
みなさまは、矢来能楽堂へ是非、お出掛けください。お待ち申し上げております。

→三井寺の詳しいご案内はこちら

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