観世流能楽師奥川恒治 能のHana

　予報によりますと、西からお天気は崩れはじめ、明日は雨模様のようです。満開の桜も堪能できましたので、まぁいいですかね。
　埼玉の与野の講座は今日から新曲、「朝長」(ともなが)になりました。朝長は源義朝(みなもとよしとも)の次男、頼朝や義経のお兄さんです。朝長の物語は平治の乱で平清盛(たいらのきよもり)に敗れ、敗走する義朝一行を襲う悲劇の一つです。
　敗走する義朝一行でしたが、落ち武者狩りの山法師に襲われ、朝長は左膝を射られます。東国を目指し岐阜までたどり着いたものの、深傷を負っていました。能の中では朝長は自害し父義朝が看取りますが、平治物語では義朝が介錯をします。戦の常とはいえ、どちらにしましても親子双方に、この上もなく辛い結末となっています。
　一曲を通して漂う「死」の匂いは、この曲に独特の重みと暗い影を漂わせています。私も1回毎に深掘りしていくことを楽しみに、公演当日を迎えたいと思っております。
　これから楽しみな3ヶ月になります！