Hana奥川恒治が綴る日々のblog

2013.03.13過去のHana「烏帽子折」を楽しもう!

4月九皐会別会に向けて、3月8日(金)に「烏帽子折」の稽古能を致しました。現在物の曲なので、場面転換も多く能舞台を隅から隅まで使うことになります。また、登場人物も多く、芝居のタイミングなど相談しなくてはいけない所も随所にあり、三役お揃いで稽古能をさせて戴けた事は大変ありがたいことでした。全体像がはっきりしましたので、本番に向けて最終調整に入りたいと思います。現在物の能をするにつけ、先人の知恵ともいうべき舞台空間の使い方に感心させられます。とても面白いので舞台進行を追いながら、「烏帽子折」を考えてみたいと思います。

三条吉次(ワキ)と弟吉六(ワキツレ)が最初に舞台に登場します。吉次は集めた宝を奥州へ持って帰る旨を吉六に伝えます。旅立とうとする二人は、少年(牛若)に声を掛けられます(幕内から舞台へ呼びかけるので、離れた所から声を掛けている事になります)。その声の主はまだ幼い少年だったので、吉次が首をかしげていますと、少年は父母も師匠もいない身なので同行させてほしいと頼みます。それならばと、吉次は自身の笠を少年に被らせ、旅を始めます。

舞台を大きく回ると、そこは鏡の宿(滋賀県)となります。吉次、吉六は横板後方に座し、牛若は後見座で下居して笠を取ります。そこへ早打(アイ)が現れ、牛若が鞍馬寺を抜け出したため、平家方が探している事を触れて歩きます。牛若はこのままではと、元服を思い立ち烏帽子屋へと行きます。
舞台常座から橋掛一ノ松へ行き幕に向って「いかにこのうちへ案内申し候」と言うと、幕内から烏帽子屋の亭主(前シテ)が現れます。夜なので明日折りましょうという亭主に、牛若は急ぎの旅故今夜折ってほしいと頼みます。亭主は承知し、中へと案内します。

二人は橋掛から舞台へ入り対坐します。烏帽子のサイズを問う亭主に牛若は左折と折り方も指定します。左は源氏の折り方、今の平家全盛の世にはそぐわないのではと、異を唱える亭主に牛若は考えがあるのでと、敢えて頼みます。亭主は左折の烏帽子のめでたい謂れを語り、折り上がった烏帽子を牛若の頭へ着けてみますと、なんとも見事な若武者ぶりだったのです!
この場面が曲名でもある「烏帽子折」の件になり、前半のクライマックスとなります。

本舞台、横板、橋掛と舞台を隈なく使う場面設定が巧みです。それぞれの場面を把握してからご覧戴くとより楽しめるのではないかと思います。

話はまだまだ続きますが、次回に致します。

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