Hana奥川恒治が綴る日々のblog
2023.05.28舞台のこと...
本日は緑泉会でした。私は能「草子洗小町」(そうしあらいこまち)の、後見を勤めました。
前半は小町の自宅で歌会の歌を詠むシーンで、幕際で終始しますので、舞台に入ることもなく、すぐに済みます。
この後の中入が問題です。短い時間内に、装束を変えなくてはいけません。時間的にはかなり厳しいので、ミスは許されません。そんな時に限って、トラブルはやって来ます。糸と針を使って装束を止めることがあります。太い針、太い糸なので、装束も痛みますから、なるべく使いたくないのですが、必要最低限の箇所に使用します。能装束は通常の着物よりはるかに重く、生地の目も詰まっています。生地に対して垂直に針を入れないと、入らない、力で押し込もうとすると針が折れます。随分長いこと針を折らずにやって来たのですが、今日は中入で折ってしまいました。針先はすぐにおさえたものの、残りの半分がありません。いったん手を止めて、本来なら脱がせて探さなくてはいけないのですが
、時間的に許されず、申し訳ないことながらシテに舞台へ出てもらいました。何事もなく曲は済み、楽屋で脱いでもらうときに、気を付けながら装束を脱がせましたが、見つからず困っていました。そこへワキ方の若い人から、針を拾いましたと、お申し出があり、やっと落ち着きました。
針は怖いので、取り扱いは気を付けていたつもりでしたが、今日は肝が冷えました。何事もなく無事に済んだことに感謝です。時々の初心です!